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Special thanks to 夢飛行 & ©キムラトモミ

 

「それぞれの人に、居場所があるまちを」

 

 そんな願いから生まれた場所、梟(ふくろう)文庫。2016年の開設以来、図書館として開館するほか、様々なワークショップやイベントを開催してきました。自然科学・手芸クラフト・和菓子作りなど、地域の大人たちの「好き!」「得意!」をおすそ分けしてもらうような形での多彩なワークショップ。子どもたちが一箱ぶんの店主さんになる「ひとはこ市」や子どもたちが中心になって運営する「子どもカフェ」。たくさんの地域の方々に支えて頂きながら、人と人とが出会い、交流し、多様な活動や経験ができるまちの居場所として運営をしてきました。

 

 その活動を通じて、学校に居場所がない、いわゆる不登校の子どもたちともたくさん出会ってきました。「無理して学校へ行かなくてもいいよ」最近では一見こうした子どもの意思を尊重するメッセージが発信されるようになってきていますが、子どもたちが「しんどい」と感じる社会の在り方そのものは何も変えてもらえず、居場所と学習の機会をまるっと失ったままの子どもたちが数多くいます。そのため何かこの状況でできることはないかと、梟文庫では2019年より週に1度不登校の子どもたちの居場所「ラクエスト」の運営も始めました。

 

 そうした中で起こった、未曾有のパンデミック。突然の一斉休校によって、不登校の子どもたちと同じように、日本中の子どもたちが日中の居場所と学習の機会を失いました。梟文庫もリアルでの活動を縮小せざるを得ませんでしたが、休校期間中子どもたちの居場所や交流の場を何とか作りたいと「オンラインふくろうぶんこ」を立ち上げ、チャット機能で交流をしたり、zoomでクイズ大会やお絵かきをする会などを開催しました。学校再開後はこうした活動を休止していますが、その後北区民まちづくり提案支援事業の助成を受けて、講師を招いてのオンライン講座を企画・運営し、新しい学びの場作りにチャレンジしてきました。

 

 パンデミックによって社会は一変し、子どもたちの置かれている環境はますますシビアになっています。不登校児童・生徒の数も年々増加し、少なくない数の子どもたちにとって学校が「しんどい」場所になっています。これまで社会は、この問題を「しんどいと感じる側」の問題として、子どもを支援し、変えようとしてきました。しかしまず変わるべきは子どもではなく、しんどい状況を生んでいる社会の仕組みや制度のほうです。「そんなことでは、大人になって厳しい社会に出た時に困るよ」よく聞く言葉ですが、厳しい現状に人を合わせるのではなく、人に合わせて優しい社会に変えていける。そういう市民を育てるのが、社会の、そして教育の責務ではないでしょうか。

 

 梟文庫はこれまでも、そしてこれからも、多様な人々のまちの居場所です。でもだからといって、中立的な立場をとりません。梟文庫は常に「しんどい」と感じる人々の側に立ち、「しんどい」と感じる環境を変えていくために学び、声をあげ、対話し、連帯することを選びます。そのために梟文庫は、大人も子どもも学びあい、対話し、活動する機会を積極的に作っていきたいと考えています。

 

 「居場所」をベースに、市民として成熟していくための「学びの場」へ。梟文庫の歩みは続きます。

 梟文庫世話人

 西尾 美里

        ©キムラトモミ

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